何故人を信じてはいけないのですか
何故人を愛してはいけないのですか
それなら何故――――
何故人を信じてはいけないのですか
信じるからこそ
相手を深く知ることができるのに
信じ合うからこそ
お互いに強い絆で結ばれるのに
人を信じた先で待つのは裏切りしかないなどと
決め付けたのは誰ですか
裏切られた衝撃は大きいかもしれません
誰も信じたくなくなるかもしれません
それでも
人は人を信じるのです
人は一人では生きていけません
人を信じることは私たちの権利であり 義務でもあるのです
人を信じれば生きていける 信じなければ生きていけないから
それなのに何故
何故人を信じてはいけないのですか
何故人を愛してはいけないのですか
愛するからこそ
相手を守ってやりたいと思えるのに
愛し合うからこそ
お互いに誰も干渉できない力を得られるかもしれないのに
人を愛した先に待つのは狂気しかないなどと
決め付けたのは誰ですか
信じたときと同じように 愛する者に裏切られたら 身を裂かれる思いをするかもしれません
自分を求めるあまり 自分に近づく者を殺していく恋人に 相手がなるかもしれません
それでも
人は人を愛するのです 愛さなければならないのです
人は一人では生きていけません
人を愛することは私たちの望みであり 力でもあるのです
人を愛せば心が満たされ 愛さなければ心はからっぽのままだから
それなのに何故
何故人を愛してはいけないのですか
何故人を信じてはいけないのですか
何故人を愛してはいけないのですか
そこまで私を束縛しておきながら
何故人を殺してはいけないか 教えてはくれないのですか
殺された者の家族が悲しむから？
――人はいつかは死ぬんだよ？
人としてやっちゃいけないことだから？
――そんなの誰が決めたの？
殺すことの楽しみを知ってしまうから？
――楽しいなら やろう
罪のない者を殺してはならないのは 何故ですか
信じることも愛することも禁じられたなら 殺すしかこの嫌な気分を晴らせる術はない そうでしょう？
それも禁じられているなら
私は何ができるのですか
――――え？
信じることも愛することも殺すこともない
ただ、【与えること】――――。
それがまだ 君には残ってる
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