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水の鏡にたたずむ緑を縦断する 石の塊の道
土を盛られ次々と消えてゆく 緑たち
〈街〉を推し進める人間にとって
緑とは一体何なのだ

山と山の間に土を流し現れた 人間の住処
どんどん迷路と化してゆく その場所
必ず襲い来る地の怒りを知っていながら
なぜそのような場に住む

見よ
〈街〉が増殖してゆく様を
まるで機械生命体が 自然生命体を食しているようだ
そして機械たちの下には自然の亡骸が残り
その自然たちはいつしか機械に牙をむく

進めるがいい 〈街〉を
進めるがいい 家々を
はた目には完成しても
どうせそれは見た目だけ

自然の報いが必ず来る
〈街〉が地に飲み込まれる様
家々が山に飲み込まれる様
我々はそんな生物を助けなどせん

己の手で掘った墓穴だ 潔くおさまれ
同種族が警笛を鳴らしているのに
笑えるな やはりこいつらは能無しだ
本当に馬鹿らしい 笑いが止まらん


それなのに

どこからか生まれる悲しみで

涙が流れるのはなぜだ


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