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 祝いましょう
 この世に生を受けた その小さな命を宿した 小さな生き物を
 今 その瞬間から 成長と崩壊を繰り返すその生き物を

 祝いましょう
 長かった生を閉じ 朽ちるだけとなったその身体を遺した あの人を
 それが理不尽なものでも巻き込まれたものでも 確かに生きた あの人を

 祝いましょう
 辛さ 悲しみが 喜び 楽しみを覆い隠してしまう この世を
 精一杯生き抜いて
 病に伏せば その病と精一杯闘って
 そうして
 この辛い世に受けた生を全うし あの人は旅立つ

 朽ちる身体にすがる必要はない
 あの人はもういない それは抜け殻だ
 無残な身体に変わる前に 私たちはあの人を焼く
 いずれ朽ちるのであっても あの人がいたという証拠を残したい
 それが 人

 祝いましょう
 彼らを
 おめでとう と
 身体という“存在”を与えられ ぼろぼろのこの世を生きて
 意思 心という“非存在”に戻り きっと平和であろうこの世ではないどこかへ行った
 あの人を

 おめでとう
 あなたは解放されました
 辛い“存在”から 元の“非存在”に還ったあなたを
 私はうらやましく思います


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